君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「あ、それとこの前………」


「もう、私に構わないで下さいっ。人が居ようが居まいが関係ありませんっ!やっぱり課長とは関わりたくないです。」

そもそも、課長があそこで車から声なんかかけなきゃ…………


「……………うん、そうなんだけどね。これ、沢村さんのじゃないかと思って」

チリンと聞き覚えのある音に後藤が差し出した物を見る


「あ、それっ」

慧斗の家の鍵

見当たらないと思ってたら…………


「ごめんね。気が付くのが遅くて。車の中にあったんだけどやっぱり沢村さんの?」


「…………」


じゃあはいっと手渡された小さな鈴をつけたキーホルダー
そのキーホルダーのプレートにローマ字で『KEITO』と書かれてあった

「ありがとうございます………」

後藤は、はに噛んだ笑顔を見せるとそのまま隣から立ち上がった


「………………」

顔を叛けたまま、その立ち上がる後藤のスーツの裾を引っ張った万由

「ん?」



「………………すみません関わりたくないなんて…………完全に八つ当たり、です」

俯いて、自分が不機嫌に任せていい放った大人げない言葉を反省した

ふわりと頭を大きな手で撫でられ、顔を上げると、ストレートに後藤が覗き込んできた笑顔がそこにあった


「大丈夫、俺は沢村さんがいい子なの知ってるから」


「………………っ」



そう言ってポンポンとされ、その場を離れ、社内に戻って行った




天気はより一層どんよりしていたのに、撫でられた後藤の手の感触が暖かくて、
ちょっぴり複雑な気持ちになった


あの人…………モテない訳ないでしょ


なんで私になんか……………


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