君が好きになるまで、好きでいていいですか?

**

幾分、不機嫌な万由を気にしなから屋上を後にする

また、何かあったんだろう………

やっぱり彼女の頭の中は彼の事ばかりで、
俺の入り込む余地は無いんだろうなぁ………




「佳樹さん………」

部署に帰る途中の階段で待ち構える様に佇む女性


「…………おはようございます。山吹さん」


秘書課の山吹薫(やまぶきかおる)


「こんな朝早くから出社されてたんですね。屋上にはどんなご用だったのかしら」


「朝の空気を吸いに………気持ちいいですよ」

そう、爽やかな笑顔を見せる後藤


「こんな天気の悪い日にですか?」

逆に、彼女の笑顔は少し引きつっていた
その表情に、困った顔を向ける


「何か、用事ですか?」




「…………そんな事…………どうして、断ったりしたんですか?」

薫の表情が変わり、眉を歪ませて後藤を見上げる


「あなたに悪い話では無いじゃないですかっ! 私は今…………貴方しか見てないんです。」


「……………」


先週山吹常務に呼ばれ、彼女山吹薫との縁談の話を促された。


それを丁重にお断りした


山吹常務は、このAsano  テクノロジー科学工業株式会社代表取締役社長、
浅野龍成(あさのたつなり)の弟嫁の兄で、
薫はその娘 
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