パンプスとスニーカー
 いつの間にか、ヒルズ内にある映画館の前まで来ていたらしく、まるでローマのコロシアムのような外観の建物の外壁には、いま上映中の映画のポスターが列挙して掲示されていた。


 すでに外観からして華やいでいて、その佇まいを見ているだけでワクワクしてくる。


 さすがに多少は歳月を感じさせる部分もあるが、間違いなくこれまでひまりが訪れたどの映画館よりも美しく素敵だった。




 「ステキなところだね」

 「そ?気に入ったなら、良かった。ここって中の作りも広くてゆったりしてるし、アクセスもいいから映画を見るためだけに来る人もいるくらい超人気のスポットだよ」




 武尊の言葉に周囲を見回せば、なるほど平日の午後…昼下がりの時間帯になったばかりの頃だというのに、まばらにでもそれなりに人影が見える。




 「週末とかだったら、凄い混みこみだったね」

 「だよね」

 「本当は夜とかの方がデートには雰囲気があるんだけど、席とかリザーブしてなかったから、今の時間帯にしたんだ」

 「へぇ」




 あまりキョロキョロしすぎないようにと気をつけながら、武尊に促されてエントランスへの階段を昇る。




 「手、腕にかけて?そっちの方が楽だよね?」

 「う、うん。…ありがと」




 気後れしてわずかに躊躇しながらも、差し出された腕におずおずと手を伸ばして腕を組む。

 いろいろなことが初めての経験だと…武尊はそんなふうに言うが、まったく男女交際の経験がないひまりこそ、すべてが初めで…物慣れず戸惑うばかりだ。


 …でも、それがイヤじゃないんだよね。


 ドキドキして落ち着かないのに、ウキウキとした嬉しさと楽しさが必ずセットでついてきて…。


 …男の人の腕って、ガッチリしてるんだなぁ。




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