パンプスとスニーカー
 カラン、コロン。


 喫茶店のドアを開け、店内に視線を一巡させる前にすぐに目的の人物たちを見つけて、武尊は大きく息を吐いた。


 先に彼に気がついていたのだろう。


 武尊が視線を向けるのとほぼ同時に、彼によく似た美貌の女が片手をあげる。


 横では、若い頃の美貌が伺い知れる清雅な美貌の…やはり彼によく似た老婦人がニッコリと微笑んでいた。


 が…、武尊の気分は、すでに刑場に引っ立てられる死刑囚か、屠殺場に連れてこられた牛みたいなものだ。


 綱を付けられているわけではなかったが、現実問題的にはそう変わりはない。




 「遅いじゃない」

 「空飛んでくるわけにはいかないんだからさ」




 すぐに飛んできた姉の叱咤に憮然としながら、老婦人へも会釈して対面側に腰を下ろす。





 「元気にしてましたか?」

 「ええ、おばあさまも」

 「あんたのせいで、元気じゃなくなるところだったのよ」





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