パンプスとスニーカー
 正直、まったく武尊は見たくなかった。


 姉や祖母の態度からロクなものではないことは容易にわかる。


 が、女二人の威圧に耐え切れない。


 どのみち切り札は、祖母たちが握っている。


 仕送りを止められては、スネかじりの身分の武尊では太刀打ちできない。


 一人暮らしをするのに高級マンションの一室を与えられ、一介のサラリーマンではとても購入することもできない高級車を乗り回して、バイトをせずとも何不自由なく生活することができているのも、彼に甘い祖母や姉たちのおかげであることくらい自覚が有る。


 この女性陣の尽力を失えば、もともと苦々しく思っている兄からの風当たりをモロに受けることになるのは必須だった。


 イヤイヤながらに渡された封筒の中身を取り出し…一目で後悔した。


 内心で呻く。


 予想していたことながら、かなりの衝撃だった。


 見覚えがありすぎるほどに見覚えがある男女の親密な写真。


 一枚目は、今にもキスでもしそうな距離で顔を近づけ、談笑しているもので、もう一枚は腕を組んでベッタリと張り付き、ホテルへと消えてゆく後ろ姿。


 おそらく他の数枚も、似たようなものなのだろう。


 もちろん、男の方は武尊自身だ。


 そして、もう一人、女の方はといえば―――、




 「その写真の女性って、うちの病院の小田切先生の奥様よね?それ、今朝、うちのポストに投函されてたのよ。いったいどういうことなのか、あんた説明できるんでしょうね?」


 …今日って、仏滅だったっけ?


 そんなことを思った。




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