パンプスとスニーカー
 「おは」

 「おはよう、武藤ちゃん、むら」

 「おはよう」




 約2名足りないが、大学で顔を合わせれば机を囲むお馴染みメンバーが教室に勢ぞろいしていた。




 「武藤ちゃん、昨日っていうか、この間から大変なんだって?」




 ひまりの隣に腰を下ろしての第一声。


 教授が教室に入ってくるまでにはまだ多少時間がある。




 「それって」

 「さっき、マツに出くわして聞いたよ」

 「そ、そうか」




 松田も口が軽い方ではないが、気にしてくれていたのだろう。




 「昨日はマツのモーション断って、むらんとこに泊まったんでしょ?」

 「そうなの。無理やり連れて帰ったんだけど、もう~遠慮しちゃって、水臭いっていうか」

 「…まあ、あんたのところじゃあね」




 結局、美紀の押しに負けて、昨日は彼女のところに泊めてもらった。


 予想に反して、美紀の彼氏はそれほど愛想の悪い人間でもなければ、彼女の友人であるひまりを邪険にするような人間ではなかった。


 言うなれば、『ザ・大人』。


 が…、




 「美紀んとこ、凄いラブラブだったでしょ」

 「……だった」




 一言に尽きる。


 本人たちはそれでもひまりを気にしてセーブしていたらしいが、事あるごとに二人の世界に入られてしまって、居心地が悪いというか目のやり場に困ったというか、とてもじゃないが二晩もお世話になれるような環境ではなかったのだ。




 「ごめ~ん、そんなつもりないんだけどさ。つい…弘昌さんがカッコ良すぎて」




 コンサバ美人の外見に似合わぬ夢見る乙女スタイルで両手を頬にあてて、頬を染めてうっとりする様は可愛いが、アテられた身としては苦笑するしかなかった。




 「いいね、むらちゃんは」




 普段はあまり彼氏が欲しいとかも思わないが、独り身の寂しさが身につまされる気がした。




 「だねぇ。まあ、むらのところはちょっと行き過ぎだとは思うけど、まさにリア充って感じ?」

 「ふふふ」




 呆れられても本人は悦にいって、嬉しそうだ。




 「見た目だけなら、むらの彼氏って北条とちょっと見、似てるのよね」

 「あ~、北条君ね」

 「…そういえば?」




 微妙な顔で顔を見合わせる。


 一同同じ気持ちなのは、言わずともわかった。



 
 「いや、比較対象が悪かったね。ごめん」

 「いいよ。顔だけなら、あたしもそう思ってたし」




 少なくても、誰も彼もが武尊や壮太の外見に騙される女ばかりではない証明のようだ。




 「で?武藤ちゃん、今夜もむらんとこ?」





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