探偵の彼に追跡されて…
事務所を出て駅へ向かう途中鞄の中のスマホが震える。

あぁまたか…

知らない番号。
前に一度出た時無言だったからそれ以来知らない番号には出ないようにしている。

もし用のある人はメッセージを残してくれるから後でこちらからかけ直せばいい。

いつもの様に駅で2度着替えて家に帰る。

いい加減こんな生活は辞めたい…

お風呂からでて冷蔵庫から缶ビールを出す。

ふだん家では飲まないのだが、今日みたいに知らない番号から電話があると飲みたくなる。

スマホのランプが点滅してる事に気づき液晶をタップすると佳乃からだった。

三輪佳乃、大学の時、同じ映画サークルに入っていた。映画サークルと言っても映画を撮ったりする訳じゃなくただ映画を見て感想を言い合うだけのサークル。

佳乃とは気が合って卒業してからも何度か映画や旅行に行く仲だ。

「もしもし、佳乃? ごめん。お風呂入ってた。」

『美野里、明日は来るんでしょうね!? あんたずっと来てないんだから絶対来ないとダメだよ! 今回は鶴見君のお祝いなんだから来なさいよ!』

鶴見君とはゼミも一緒だったがあまり喋った事は無かった。その鶴見君が結婚するらしく、サークルのみんなでお祝いをすると佳乃からメールは貰っていた。

私達は半年に1回の割合で同じサークル仲間の先輩や後輩が集まって飲み会をしている。私はここ2年ほど断っていた。

別に先輩や後輩と飲むのが嫌な訳じゃない。ただ気が乗らないだけ。今回も断るつもりでいた。

「やっぱり行かなきゃダメ?… 私、鶴見君とあまり親しくないしさ…」

『何言ってるの? 鶴見君も会いたがってたわよ! 明日18時、いつもの居酒屋ね! じゃーね!』

佳乃の電話は切れた。

「ハァ… 気が乗らない。もう一本飲もう」

冷蔵庫の缶ビールへ手を伸ばす。




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