あなたに恋をしたらダメですか?
私が小さく頭を下げると、斎藤さんは慌てて「ちょっと、咲世ちゃん!頭上げて!」と、困ったような声を出した。


「俺こそ、ごめんね。咲世ちゃんに彼氏がいるなんて知らなくて、」
「いや、斎藤さん!それ誤解で、あの人は彼氏じゃないです」
「え?そうなの…?」
「でも、私の好きな人です…片想いなんです…」
「そっか…」


叶わないかもしれない私の片想い…。斎藤さんは寂しそうに笑うと、私の顔を覗き込んだ。


「咲世ちゃんは笑ってたほうが可愛いよ」
「え…」
「ほら、俺のことはいいから仕事しないと!牧さん倒れちゃうよ!」
「あっ、すみませんっ。失礼しますっ」


斎藤さんに言われ「未知子さん、チキンカツプレートお願いします!」と言い残して、後片付けやら食事を運んだりやら、バタバタとしていた。


「はぁ…忙しかったですねぇ…」
「そうねぇ。はい、ハニーラテ!」
「うわぁ、元気戻りますー!」


働いた後の一杯。最高だ。斎藤さんとはあれきり、話せないくらい忙しくて「また来るよ!」と、爽やかに去って行ってしまった。


「斎藤さん、良かったね。ちゃんと来てくれて」
「未知子さん…。本当、良かったです…。私、こういう経験したことないから……」


本当、斎藤さんには申し訳なく思ってしまう。でも、応えてあげられないのが事実なわけで…。


私の勝手だけど、また、たくさん来て欲しいな…。


< 66 / 122 >

この作品をシェア

pagetop