君がいない明日。
今日は雨の日だ。




私の歌を褒めてくれた人の名前は
風宮空。忘れるはずがない。


違うクラスで人気者でモテて。
いつも女の子に囲まえ状態。


中学生ってあんなにも積極的なんだ女子ってっと感心するほどだ。

私ももしかしたら空のこと好きなのかもしれない。なんて単純。
そう思う。

歌をほめてくれただけ。

きっと相手はそこまでの深い意味はない。

わ、わかってる!わかってる!
でも、でも、でもっ!

考えるたび胸がきゅーってなって
ふるえてくるんだ。


あー、話すきっかけもなく
しかも別のクラス。
終わった。

私達は3年生。来年の高校生。
高校の進路なんてわからない。


でも聞きに行くなんて私にはできることじゃない。

(.....屋上へ行こう。)

悲しくなった私は重い足取りで屋上へと向かった。雨が降ってるいるが、屋根があるところへ行けばいいだろう。


「はぁー...」

ため息が出る。自然とあなたのことを
考えると、思うと。


これが恋ってやつか....。

初めての恋は私には遠すぎて
つかめそうにないや。


最初から諦めるなんてそんな人だよ。
私は...。







「どーしたの?」

「!!」

後ろから声がしてびっくりして振り向くと
そこには空がいた。

空は私に近づいていたから今の距離は
相当近いと思う。

「そ、そらぁ!」

「あ、びっくりした?はは、」

優しそうな笑顔で笑うから
胸がきゅーってなって苦しかった。

会いたかった......

心の中でそんなことを考えていた。

話したかった.......


やっと、叶った。



私は自分でも気づかないくらいニヤけてて
嬉しそうな顔をしていた。
と空が言っていた。

「あれからも、歌歌ってる?」

「もちろん、あ...のね、そら
私、嬉しかったの。そらが私の歌を聞いてあんな感想を持ってくれたこと」


「俺はそんなに深く考えてないよ、
でも、ただ、本当にあの歌を聞いて
あの声を聞いて素直にあぁ思ったから
口にしただけ」


「空にとってはそーかもしれない、
でも私にはちょっとした救いだったりするの....えっと、勝手にごめんね。でも、
嬉しかった。ありがとう」


空は一回頷くと屋上にある椅子に座る。

「なんで、ここに来たの?なんかあった?
ため息ついてたし」


空が話しかけてる。

こんなに嬉しいことはない。

胸が踊ることはない。


「......えーっと、.....」

これを言うのはなんかもう告白なんじゃないか。好意が少しでもあると
バレてしまうんじゃないか。

私の心臓はバクバクだった。
呼吸も難しいほど。

そっか、これが恋ってやつかと
また思う。


なんか、なんか、この感覚

ぶち壊したい。






「雨は好き?」





「いきなりだな。うん、好き。
周りからは不思議がられるけどこの音
嫌いじゃない。何かを伝えようとしてるんだよ、きっとさ、」





「でも、雨ってきっと、晴れがあるから
好きになれるわ」






「確かに、ギャップみたいな?笑」






「だからあなたは私にとって....」




「空は雨なの」





「いきなりごめん、聞いてほしい」





空はまた頷いた。
何も言わずに。真剣な顔だけど
優しい顔で。言いやすかった。

好きを伝えるというかそのままただ、
思ったことを伝えるだけ。
でも、その行動は私にとって久しぶりなもの。緊張はしてあたりまえ。




「私は歌が好き。だからといって上手いわけではない。壁にぶち当たって嫌いになろうもした時もあった、だからただ好きという気持ちだけで歌っていようと、思った時だったの」





だって、






“あなたがあらわれたから”




嵐のようだった。鼓動は止まらなくて。






けど、あなたに触れてわかった。

その優しさは嵐ではない。

優しく降り注ぐ雨だ。





のんびりと過ごしていた私にとって雨は
厄介物。
それでも好きになってしまった時点で





私の負けなの。




「私の歌を聞いて、綺麗と繊細と言ってくれてありがとう」






素直になるのは恥ずかしいものだ。
伝えれば伝えるほどやっぱり、いいんじゃないかと振り出しに戻ってしまう。


わかってる。


そう言い聞かせているしかない。


空.....私はまだあなたにあってそんなたってない。ましてや、話すのは今回で2回目。




でも、雨の日の今日。

雨のように私の心に

降ったりやんだりする

あなたに会えて、話せてよかった。







好きです。


初めて本気で恋したひと。



好きです。


伝えたくてもまだ伝えられない思い。





会ったばかりのひとをこんなに
愛おしく思うなんて。




あの夏、あなたに会えてよかった。










本当に良かった。
心からそう思うから。



私は歌うの。




















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