次期社長の甘い求婚
諦めなくちゃって分かっていたのにそれができなかったのは、きっと鈴木主任が私に優しくしてくれたから。


妹としか見られていないとは知らずに、ちょっと期待しちゃっていたんだ。


もしかしたら、このままずっと一緒に働いていたら、私に気持ちが傾いてくれるかも……なんて。


「もう最悪っ……!」


ただ平凡に幸せになりたい。それだけなのに、どうして神様は叶えてくれないのかな?


誰もお金持ちになりたいとか、自慢できるような彼氏が欲しいとか、出世したいとか。
そんなことを望んでなどいないのに。


一度も味わうことができなかった平凡な幸せな生活を、送りたいだけなのに。


「うっ……ひっく……」


声にならない思いが溢れていく。


通行人には“酔っ払い”とか“変な人”って思われているかもしれないけれど、涙は止まらなかった。


裾は涙でびしょびしょ。

たしかバッグの中にハンカチが入っていたはず。


少しだけ顔を上げ、バッグの中に入っているハンカチを探す。
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