次期社長の甘い求婚
「どうして泣いていたかは敢えて聞かないけど、これだけは教えて。……少しは気持ちが軽くなった?」


相変わらず優しい声色に、俯いていた顔が上がってしまう。


神さんは私を見つめたまま「ん?」と聞いてくる。


その仕草にドキッとしつつも、平静を装い「はい」と返事を返す。


「そっか、ならよかった。ごめんな、今朝は置き去りにしちゃって。今日は地方の方へ日帰りで出張が入っていたから」


そうだったんだ。……ん? ちょっと待って。


「もしかして、わざわざ戻ってきてくれた、んですか?」


ふと疑問に思い聞いてしまったものの、すぐに後悔してしまう。

だってこんなの、ちょっと自惚れ発言じゃない?


あたふたしてしまっている私に、神さんはすぐに肯定するように頷いた。


「そうだよ、美月に会いたい一心で早く切り上げて戻ってきたんだ」

「――え」


一瞬にして神さんの表情は変化し、真剣な面持ちで私を見据えた。


「それと伝えたくて」


前置きすると神さんはそっと私の手を握りしめ、話を続ける。
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