次期社長の甘い求婚
「初めてですか!?」


声を荒げてしまった。

だってまさか初めてだったなんて、夢にも思わないじゃない?


「両親は忙しい人だったからさ。こういったところに連れていってもらったことないんだ。遊園地も学生になってからだったよ、初めて行ったのは」


「……そうだったんですか」


それならさっきまでの神さんの言動に納得できてしまう。


「だから子供の頃は、周りの友達が羨ましかったよ。みんなは俺の家の方が羨ましいって言うけど、俺からしたらなにが羨ましいのか理解できなかった。……両親と毎日食事を共にして、休日はどこか連れて行ってくれたり、遊んでもらったり。そういうこと、してもらったことがなかったからさ」


昔の苦い記憶を思い出しているのか、神さんの飲み物を持つ手の力が強まった。


「悪い、変な話して。続き、見に行こうか」


ハッとしたように笑顔を取り繕い、立ち上がった神さん。


神さんはさっきの話、聞かなかったことにして欲しいのかもしれない。

思わずポロッと出てしまった話なのかも。
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