次期社長の甘い求婚
だったら私は立ち上がり、水族館の続きを楽しみべきなのかもしれないけど……。


「あの、神さん」

「ん?」


座ったまま見上げれば、神さんは『どうした?』と言いたそうに、首を傾げる。


“神さんの気持ち、わかります”なんて言葉は軽率だろうか。

けれどなんとなく幼い頃感じた寂しさや、周囲を羨む気持ちは同じだったんじゃないかなって思ったの。


私も幼い頃、周りの友達が羨ましくて仕方なかった。

普通の家庭に憧れて仕方なかったの。


境遇は全く違うけれど、私と神さんが感じた感情は同じじゃないのかな……?


「美月、どうしたんだ? もしかして疲れた?」


いつまでも何も言わない私に、神さんも再度ベンチに腰掛け、心配そうに私の顔を覗き込んできた。


「いいえ、その……」


頭をよぎった言葉をグッと飲み込んだ。

ちょっと事情を聞いただけで言うのは、やっぱり軽率だと思ったから。


“お前になにが分かるんだ?”って言われてしまうかもしれない。
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