次期社長の甘い求婚
「美月はさ、嫌じゃないの? こんなに並ぶのとか」


恐る恐る問いかけてきた神さん。


「嫌じゃないですよ。それに並んで待って食べた分、美味しさも倍増するものじゃないですか」


よく休日に、亜紀と買い物やランチに出掛けている。

せっかくだから、と毎回有名店に並んで食べているけれど、その待つ時間も楽しいひと時だと思うから。


「待つ時間も大切ですよ」


そんな思いから出た言葉だったけれど、神さんは終始驚きっぱなし。

目をパチクリさせ、信じられないものでも見るような目で私を見てくる。


「そっか。……そういうもの、なんだな。なんか目から鱗」

「え、なにがですか?」


私、目から鱗って言われるようなこと、言った覚えないんだけどな。


少し進んだ先で、神さんはその理由を語り出した。


「また昔の話になっちゃうけど、両親に昔から時間は有効活用しろって散々言い聞かされてきたからさ。食事だってそうだった。家族でたまに外食に行っても、予約できるところだけ。だからこれも初めて。……食事するのに、並ぶのとか」
< 159 / 406 >

この作品をシェア

pagetop