次期社長の甘い求婚
手にしていたカップをそっと置き、神さんと向き合う。

店内には心地よいクラシックの音楽が流れている中、神さんは話を続けた。


「それは気にしないで。こっちが無理やり誘ったんだし。……本当に楽しかったよ。新しい発見だらけだった。今までずっとデートはさ、男がエスコートして当たり前って思っていたけど、違うんだな。……お互い楽しまないと意味がないのかもしれない」


「神さん……」

「それに気づけたのも、美月のおかげだよ。価値観押しつけるなって言ってくれたから」

「そんな……」


神さんのこと知らなかったとはいえ、失礼な発言だったのに。


ふと亜紀が以前言っていた言葉が頭をよぎった。


“人間なんて皆、いくつも顔を持っているもんじゃない。その顔を易々と他人に見せるわけない。深く付き合って見て、初めて知るのがほとんどじゃないの?”


“人を見かけと偏見だけで判断しないことね”


亜紀の言う通りだ。

私は見かけと自分の中で勝手に抱いていた価値観と偏見だけで、神さんを見ていたから。


本当の神さんは、違ったのに……。
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