次期社長の甘い求婚
まじまじと見つめていた視線はお好み焼きから私に移されていて、恥ずかしくなってしまう。


「たっ、ただ焼いているだけですから! ……もうできますのでお皿準備して下さい」


精一杯平常心を心がけて言うものの、動揺しているのは神さんにバレバレなようで、必死に笑いを堪えながら「はい、分かりました」なんて言われてしまった。


完全にバカにされている感じがしちゃうけど、神さんが笑ってくれている。

そう思うと怒りも動揺もどこかへ飛んでいってしまった。


「あとはそこにあるソースやマヨネーズなど、好きなだけかけて食べてください」


焼き上がったお好み焼きを切り分け、神さんの分をお皿に乗せて差し出す。


「え、なに? 最後まで美月がやってくれるんじゃないの?」


「なに言ってるんですか! それくらい自分でやって下さい!! それに自分で好きな味の濃さにできるのがいいんじゃないですか!」


お皿を受け取ったままキョトンとする神さんに、お皿をグイッと押し退け言うと、神さんは「なるほど」と呟きながら、いそいそとソースを付け始めた。


その姿に、本当に神さんは自分で焼くお好み焼き店に入るのは、初めてなんだと実感させられてしまった。
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