次期社長の甘い求婚
ジッと見つめられてしまう中、男性の目元はみるみるうちに潤んでいった。


えっ、泣いている……?


思いがけない事態に、ますますどうしたらいいのか分からなくなる。

この状況を打破してくれたのは、神さんのお父さんだった。


「おい、まだなにも話していないのに泣く奴がいるか」

「……すまん」


男性は慌てて目を伏せ背を向けると、ポケットからハンカチを取り出し目元を拭っている。


なにがなんだか分からない状況の中、神さんのお父さんは申し訳なさそうに言った。


「悪いね、ちゃんと順を追って説明するから。……とにかく彼の隣に座ってもらってもいいかな?」

「あ、はい」


彼――はもちろん、いまだに背を向け涙を拭っている男性のことだよね?


躊躇してしまうも私に拒否する権利はない。

言われるがまま足を進め、彼の様子を窺いながらそっとソファーに腰掛けた。


「ほら、お前も座れ」

「あっ、あぁ」
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