次期社長の甘い求婚
その様子が可笑しかったのか、神さんのお父さんは口元に手を当て笑った。


「反対する理由はないさ。結婚で一番大切なのは、お互いの気持ちだと私は思うからね。……ただこれは、私一個人の意見でしかない。……言いにくいんだが、妻、恭介の母親と恭介にとって祖父に当たる会長が難色を示していてね」


言葉を濁していく神さんのお父さんに比例するように、表情も曇っていってしまう。


「そう、ですよね」


当たり前な話だよね。一社員でしかない私が相手だもの。

お父さんにだけでも反対されなかったのが、奇跡みたいなものだ。


「それともうひとり」

え、もうひとり?


前置きすると、なぜか隣に座る男性に目配せをし始めた。


その様子にそっと隣を見ると、男性は困ったように頭を掻いている。


「ほら、なんのためにわざわざ勤務中の彼女を呼び出してやったと思っているんだ。いい加減名乗れ」

「分かっている」


ふたりの間で交わされる話に、ついていけない。
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