次期社長の甘い求婚
頭に浮かぶのは、幼少期の辛い記憶ばかり。


ずっと幸せになりたかった。普通の家庭に生まれて平凡な日々を過ごしたかった。

そんな私がやっと見つけた幸せだというのに、どうしてそんなことが言えるの? 生活には困らないほど援助してもらってきたけれど、一切顔を出さなかったあなたに。


思いが駆け巡るほど怒りが込み上げてきてしまい、拳をギュッと握りしめてしまう。


「まだ籍を入れていないんだよな? だったら考え直して欲しい」

「……っあなたになにが分かるんですか!?」


カッとなり、気づいたら声を張り上げ立ち上がってしまっていた。


「お母さんと結婚せずに認知だけして、お金を入れるだけで一切父親らしいことをしてくれなかったあなたに、言われる筋合いありません! 私がっ……どんな思いで今まで過ごしてきたか、あなたに分かるんですか?」


「美月……」


怒りで声が震えてしまう。


切なげに揺れる瞳に、怒りがますます込み上げてしまう。


そんな目で私を見上げないでほしい。

泣きたいのはこっちの方だ。


突然現れたかと思えば、いきなり神さんとの結婚に反対するなんて。
どこまで勝手な人なの?

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