次期社長の甘い求婚
もちろんそんなこと言えないけど。
言ったらきっと、大号泣しちゃうだろうから。


想像すると笑えてしまう。

緩む口元を噛みしめながら、お父さんを見据えた。


「私、今の生活に満足しているの。ご近所さんも職場のみんなも良い人ばかりだし。……だから心配しないで」


そう言うとお父さんは安心したように息を漏らした。


「分かったよ。……けれどもしなにかあったら、いつでも連絡しなさい」

「はい」


返事をするとお父さんは大和田さんに呼ばれ、後ろ髪を引かれながらも車に乗り込み、去っていった。


「……行っちゃった」


一日なんてあっという間だ。
特にお父さんと会う日は。


見えなくなった車を見送り、ゆっくりとアパートの中へ入って行った。




“美月……今、お前は幸せか?”


お父さんに問い掛けられた瞬間、すぐに頭に浮かんだのは神さんだった。
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