毒舌王子に誘惑されて
私は一人でマンションのエントランスをじっと見張っていたけど、住人らしき年配の男性が一人入っていっただけで京堂は姿を見せなかった。

30分くらいで葉月君も戻ってきた。

「どうだった?」

「空振り。 24時間営業のスーパーで少し買い物しただけでした」

「そっか。 なかなか上手くはいかないねぇ」

私は腕を上にあげて、伸びをする。
狭い車内にこもっているせいで、身体が凝り固まって痛かった。

「刑事ドラマと違って、現実はこんなもんです。 それより、美織さん」

「なに?」

肩のストレッチをしつつ、隣の葉月君を横目に見る。

「さっき、なんか勘違いしたでしょ?」

葉月君はにやりと意地の悪い笑顔を見せた。

「はぁ!? してないですっ」

図星なだけに、私はムキになって反論する。葉月君はそんな私の態度を楽しんでいるかのように、余裕の笑みを浮かべる。

「俺に惚れないでくださいね」

「だ、誰が惚れるのよ・・残念ながら、私はうんと歳上の落ち着いた男が好みなんです」

私はますますムキになって、ついつい声も大きくなる。

「美織さんよりうんと歳上のいい男はとっくに結婚してませんか? 不倫はオススメしませんよ」

「うるさいっ、余計なお世話」

狭い車内に私のヒステリックな叫び声が響く。
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