毒舌王子に誘惑されて
「ゲラが上がってくるの楽しみだな〜」
私のその言葉に、葉月君は何かを思い出したように口を開きかけて・・・そのまま押し黙った。

「葉月君、どうかしたの?」

「ーーいや。何でもないです」


この時、葉月君が何を言おうとしたのかを私はすぐに知ることになった。




編集部に定時はあってないようなもの。

その日、規定の時間より2時間ほど遅れて私が出勤すると、リアル編集部はザワザワと騒がしかった。
部員達は慌ただしく走り回り、ひっきりなしに電話が鳴っている。

何かあったんですか?
私がそう問いかける前に、編集長から指示が飛んできた。


「美織ちゃん、悪いけどお受験記事は差し替え。女優の水田 玲子が離婚した!!
葉月が差し替え記事書いてるから、手伝いに回って」

一瞬、頭が真っ白になったけど、私の記事がボツになったのだということはかろうじて理解できた。

水田 玲子は超がつく大物女優で、夫も著名な映画監督だった。
理想の夫婦ランキング常連の二人の離婚となれば、差し替えも当然だろう。


ーーただ、落とす記事に自分のものが選ばれてしまった。その事実が私の心を沈ませた。

気持ちを切り替えようと思っても、ネガティヴな思考に頭が占領されていく。

サブリナなら、ファッション誌ならこんなことないのに・・。
ちゃんと企画した通りに仕上がるのに。
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