恋に目覚めたシンデレラ
聞こえてくる僅かな音。
耳を澄ますとそれは足音だと解った。
キッチンに向かっているのだと解り自室を出るとやっぱりそこには灯りが付いている。
眠れないと言う彼女にホットミルクを作った。
ここへ帰ってきた時のあの様子、眠れずにいることも……今夜は一人にさせたくない。
抱き上げて自室のベッドの上に下ろした葵を残し毛布と枕を持って続きの部屋に入った。
窮屈でも今夜はここで過ごす事になる。
大人一人、足を伸ばせるだけの広さはあるから横にはなれるがここで熟睡は無理だ。
目を閉じた……無駄な努力だとは思うが。
それでもあのまま部屋で一人で眠れない夜を過ごすよりも葵には目の届く所にいてほしいと思う。
人が入ってきた気配に気付き体を起こすと大人しく横になっているはずの葵が立っていた。
早く戻るように制しても云うことを聞いてくれない。
本当に覚悟はできているのか……彼女はとうとう目の前まで来てしまった。
只でさえ矢嶋の事で昂った神経はまだ完全には静まってはいない。
危うい状況だと解っているのか。
「……戻れと言ったのに。ここまで来たということは覚悟はできた、そう思って構いませんね?」
それでも本能に従って彼女の方に手を延ばした。