夏の嵐と笑わない向日葵
「もっと早く、傍にいてやるべきだった」
「……?」
その言葉の意味が分からなくて、あたしは顔をあげて首を傾げる。
真剣にあたしを見つめる嵐君と目が合った。
「俺決めた!!」
「??」
突然立ち上がり、あたしの隣にドカッと座る嵐君に、あたしは少し後ずさった。
「向日葵!」
嵐君はそんなあたしとの隙間を埋めるように体を近づけ、あたしの左手をとった。
大きな手……。
それに、温かい……。
人の温もりに触れるのは、久し振りだった。
近い距離で、あたし達は見つめ合う。
人と触れあうのは怖かったはずなのに、手が、目が離せない。
「夏休みの間、ここで一緒に暮らす。そんで、向日葵の事、めちゃくちゃ笑わせてやるよ」
「え……?」
「こんな、悲しそうな顔ばっかじゃ、ダメだ。向日葵は笑顔が似合うんだからよ!」
あたしの笑顔なんて知らないくせに、嵐君はニッと笑って、それからガシガシとあたしの頭を撫でた。
おばあちゃんの手とは違う、力強い手だな。
そんな嵐君に戸惑いながらも、あたしは、頷いてしまうのだった。