若の瞳が桜に染まる
「え、リアクション薄くね?わざわざ来てやったのによ」

腕組みをした蘭が不満げにする。

「びっくりしすぎて言葉が出ない…」

我久は、立ち上がった姿勢のままで固まっていた。

「我久、誕生日おめでとう。
ぎりぎり間に合ったみたい」

そう言って歩み寄ってきた日和にケーキを差し出される。ただぼんやりとゆらゆらと揺れるろうそくの火を眺めていると、消してと言われて息を吹いた。

ふわりとろうそくの煙が漂う。

今日のこの日は我久の誕生日だった。

日和にはそのことを伝えてはいなかったが、我久としてはせっかくだから日和と一緒に過ごしたいと思っていた。

そんな細やかな願いを叶えるためにも、今日は早く帰るつもりだったのに、言いつけられた新しい記事の作成。
それで、落ち込んでいたのである。

もう良い大人なんだし、誕生日をどう過ごそうが関係ないと強引に考え直して、悲しみを少しでも和らげようとしていたのだが…。

まさかここまで盛大に祝われるとは思っていなかった。
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