若の瞳が桜に染まる
我久の人生のなかでも、ここまで賑やかな誕生日は初めてだった。

「皆、ありがとう」

嬉しさのあまり瞳が揺れる。過去のことを振り返り、込み上げてくるものがあった。

「あれ、先輩泣いてません?」

からかった楠井は、すぐさまぺしんと、余計なことを言うなとばかりに香織にはたかれる。

「ヒヨリンに誘われて、私たちも来ちゃいました。
正隆だけ撒ければよかったんですけど」

「ひどい…」

胸に手を当てて、傷ついた素振りを見せる楠井を香織は一切気に止めない。
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