無機質な恋模様
といってもただぼーっと僕の傍らに立って作業の様子を見守り続けている訳ではない。

帳票はこの後色んな場所へと配送しなくてはいけないので、その送り状や梱包用の袋、箱の準備をしたり、先ほどの1号君ではない別の子を使って、別の業務の為のデータ入力をしたり、どこかに電話をかけたりして過ごしている。

そして紙切れになったら僕が知らせてあげて、真奈美ちゃんは補充を行うという訳だ。

今日もその時が訪れた。

僕は『ピーピー』と鳴いて彼女を呼び、同時に液晶パネルにメッセージを表示する。

「はいはーい」

真奈美ちゃんはすっ飛んで来ると、パネルを確認してから返答した。

「あ、トレイ1が空になっちゃったのね。ちょっと待っててねー」

そう言いながら当該トレイを引き出し、そこ用の紙が入っている箱に近付く。

「均等に入れてるつもりなんだけど、やっぱ微妙な時間差で無くなるんだよな~」

そして独り言を言いつつ紙をセットし、トレイを閉じた。

しばしの間のあと、僕は再び、無事に動き出す事ができた。

真奈美ちゃんも補充が済んだのだから、デスクの方に戻っても良いのだけれど、何故かその場に留まり、僕をじっと見つめていた。


「…リンタ君…」

そしてそう囁きながら、そっと右手を伸ばし、僕の頭をなでなでする。

その言動に尋常じゃなくドキマギしてしまった。
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