イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
事前に知らされていれば、もっといい服装をしてこれたのにとか、手土産も用意したのにとか、様々なことが悔やまれる。

しかし、何を言っても、もう玄関の前に来てしまったのだから仕方ない。腹を括ってお会いするしかないのよ、一葉!

急に緊張してくるけれど、とりあえず身だしなみをチェック。そして気合いを入れる私に、部長はこんな一言を告げた。


「驚くのはまだ早いぞ」


まだ何かあるんですか!?と少しギョッとする間にも、彼の手でドアが開かれる。玄関から伸びる明るい廊下が見え、奥から女性が姿を現した。


「お帰りー」


嬉しそうに声をかけるその人は、部長と目元がよく似た美人さんで、お母様なのだろうとすぐにわかった。

無愛想な声で「ただいま」と言う部長の後に続いて、かなり遠慮がちに肩をすくめて玄関に入り、なんとか自然な笑顔で挨拶しようと試みる。


「こんばんは。夜分遅くにすみま──」

「一葉ちゃん! まぁ綺麗になって~!」

「えっ?」


初対面のはずが、そうではなさそうな口ぶりで目を輝かせる彼女を、私はキョトンとして見つめる。

え、どこかで会ったっけ!? そう思えば会ったような気がしないでもないけど、やっぱり思い出せない。

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