イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
実家に着いたのは正午を少し過ぎた頃。部長改め零士さんは、手土産も用意してくれていて、その菓子折りを持って車を降りた。
さすが数々の商談を行ってきた部長様だ。こういう場に慣れているのだろう、堂々としていて品格もある。
……逃げ出したい気持ちになっているのは、この私だけ。
それでも、門を抜けて玄関の前まで来ると、意を決してインターホンに人差し指を伸ばす。
「お前、もう俺から逃げられないからな」
──ピンポーンと音が鳴ったと同時に、零士さんが私の心の内を見抜いたかのように言い放った。
ギョッとして隣の彼を見上げると、綺麗なお顔に意味深な笑みを浮かべている。
ど、どういうこと? ちょっとブラックな響きだし……。
私が眉をひそめる間にも玄関のドアが開かれ、「お帰り、一葉!」と、男女の賑やかな声が聞こえてきた。
家族三人、総出でお出迎えだ。……って、なぜ花苗までいるの!?
笑顔の両親と、そわそわしている妹に、とりあえず「ただいま……」と言って中へ入る。私に続いて零士さんが姿を見せると、辺りが一瞬静かになった。
にこりと完璧な笑顔をつくる彼は、一礼して挨拶する。
「今日はお招きいただいてありがとうございます。一葉さんとお付き合いさせていただいてます、坂本零士と申します」