キミのコドウがきこえる。

翔太はそう言って、カウンターの竜さんに「枝豆とビール追加で」と言って、テーブルの上に置いてあったジョッキを口元に持っていくと、今度は一気に飲み干した。



「ねえ、ずっと気になってたんだけどさ、翔太が今やってる地域おこし協力隊ってどういう仕事なの?」



「簡単に言うと、地域を元気にするって仕事なんだけど、基本的に地域おこし協力隊って地元以外の外部の人間しか出来ない仕事でさ。外部からきた人間に、その地域の良さを見つけてもらって、地域の人と協力しながらその良さを発信したり、商品開発したり……なんか特にこれっていうのはなくてさ。俺も1年やってるけど、何やっていいかさっぱり分からなくて悪戦苦闘中」



『悪戦苦闘中』って言ってる翔太だけど、仕事は楽しんでいるみたいで、子どもの頃一緒に太鼓を叩くことに夢中になっていた、目がきらきら輝いた顔と今話している顔がまったく一緒だった。



「ふうん。音羽町でも募集してたんだ?」



「うん。その前は普通の仕事してたんだけど、たまたま転職しようと思ってインターネットで色々検索してたら、音羽の地域おこし協力隊の募集見つけてさ。昔住んでたところだったし、応募しちゃえ!って。そんな深い考えなしだったよ」



「深い考え無しで応募できちゃうなんてすごいなあ。私、色々考えちゃって出来ないこと多いから」



「まあ、考え無しってのは言い過ぎかもしれないけど……ちょっとは考えたし、それに……」



翔太は、そう言って私の顔を見て、ふっと優しい目をして笑って「まあ、いいや」と言って枝豆をつまんだ



「それで?音羽に来てからはどんなことしてたの?」



「最初は地元の暮らしに慣れようと思って、漁に出てみた!」

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