キミのコドウがきこえる。
『あの時のリベンジ』
翔太は、そういう風に思っているのかもしれないけれど、私にとって『大太鼓を叩く』っていう行為は、もう絶対にしたくないことで素直に「うん、いいよ」とは言えなかった。
きらきら目を輝かせながら私を見つめる翔太が、とてつもなく遠い存在に感じた。
翔太と違って、私は仕事もやめちゃったし、何にもないんだなと思うと急に胸がぎゅっと苦しくなってきて……
「え!?ナル!?何で泣いてるの!?」
「え?」
翔太の言葉にびっくりして、持っていたジョッキをテーブルの上に置いて目のところを触ると、私の目からは涙がこぼれていた。
「あれ?なんで涙なんて……」
私は慌ててバッグからハンカチを取り出し、涙を拭こうとしたところ、タイミング悪く竜さんが焼き鳥の盛り合わせを持って小上がりの部屋に入ってきた。
「はい。焼き鳥盛り合わせ……えっ!?翔太!お前女の子泣かせるなんて、焼き鳥が余計塩味になっちゃうだろ!」
「いやいや、竜さん!今うまいこと言ってる場合じゃないから!」
「あ、あの!すいません。これは翔太に泣かされてるんじゃなくて……ちょっとコンタクトがずれちゃっただけで」
「……ということなんで、大丈夫だから!」
翔太は、竜さんから焼き鳥の盛り合わせをさっと受け取ると、竜さんを小上がりの部屋から追いやって、襖を閉めてくれた。