キミのコドウがきこえる。
「甘口が好き……飲みやすいし」
翔太はしょんぼりする私に気を使ってか、「甘口な」といってすぐに日本酒を注文してくれた。
「翔太、あのね……私の会社つい最近倒産したんだ」
「え!?あ……そうだったんだ。知らずにごめんな。倒産したってことは、音羽に帰って来るの?」
「ううん。落ち着いたら向こうに帰ろうかなと思って。私、実家に戻る気なくて」
「そうなの?あ!もしかして向こうに結婚相手がいるとか?」
「いや、全然そういうのはなくて……ちょっとね、お父さんとうまくいってないんだ」
「……へえ……」
翔太はそれだけ言うと、枝豆を手に取って一粒ずつゆっくり食べた。
そして、「まあ、おれも親父とは似たようなもんだし」と言って、苦笑いするとビールをぐいっと飲み干した。
「ナルはさ、ずっとお父さんとそういう状態ってしんどくない?何かきっかけがあったら、仲直りとか……そうまでいかなくても、普通に話せるようになりたいとか思わない?俺の中で、ナルとお父さんがそうなってることって意外でさ。ナル、昔はお父さんのこと大好きだったし」
そうか……翔太は学習発表会前にいなくなったから、私とお父さんがそういう状態になる以前のことしか知らないんだ。
「その……学習発表会の時に色々あったんだよね、実は」
小上がりの襖がそっと開けられて、竜さんの手と熱燗とおちょこが遠慮がちに部屋に入ってきた。