キミのコドウがきこえる。
翔太は私におちょこを渡すと、おちょこからあふれ出しそうなくらい日本酒を注いでくれた。
私は、おちょこにそっと唇をくっつけて少しだけ日本酒を口の中に含み、すうっと鼻を抜ける甘い香りを感じた。
「学習発表会の太鼓ね、お父さん見に来てくれるって言ってたんだけど、見に来てくれなくて。私そのことが嫌で、発表会自体ボイコットしちゃったんだよね。そうしたらお父さん、周りのみんなに悪いことしたと思わないのか!って怒っちゃって……。それ以来なんかお父さんの顔まともに見れなくなっちゃったんだ……」
「……辛かっただろ?」
「……うーん……まあ、昔のことだしもう忘れちゃったよ」
私は、心配そうに私を見つめる翔太にお盆に乗っていたもう一つのおちょこを渡して、日本酒を注いだ。
「忘れたなんて嘘だな。ナルがさっき泣いたのはその時の辛さがまだあるからじゃないの?」
「……分からないよ、そんなの……」
「じゃあ何で泣いたんだよ。さっき泣いた時言ってたよな?私が勝手に考えすぎちゃってって。何考えてたんだよ」
翔太の声が心なしかいつもより低い感じがした。
それに表情も。
「何?翔太怒ってるの?」
「うん、ちょっとね」
翔太は、眉間に皺を寄せながら日本酒を一気に飲み干して、私から視線を逸らすと、「はあ」と、私に聞こえるような大きな声でため息を落とした。