キミのコドウがきこえる。
「何?」
「あのさ、成美ちゃんのことなんだけれど」
「成美がどうかしたの?」
「ちょっと気になることがあって。今日成美ちゃん達のアイドルユニットの会議があるんだけど一緒に来てくれる?」
「うん。いいよ」
「場所はここだから」
翔太はそう言って自分の背にある花竜を見上げた。
頷く私を見て、翔太はどこかほっとしたように微笑み「じゃあ」と言って役場方向へと歩いて行った。
翔太の背中を見送りながら、このまま帰るのももったいないなと思い大太鼓記念館へ向かった。
大太鼓記念館の玄関前には庭ほうきを持った西村さんがいた。
「西村さん、おはようございます」
「あれ?成子ちゃん。帰ってきてたのかい?」
「はい。色々手続きを終えて昨日。また音羽町民になりました。今後ともよろしくお願いいたします。」
「そりゃ良かった。和ちゃんも喜んだだろう?」
「表情にはあまり出ていませんが……たぶん」
「まあそういう性格だからな和ちゃんは」
西村さんは昔と変わらず奥歯が見えるくらい大きな口でガハガハと笑った。
頭に巻いた手ぬぐいをほどきながら取って、額の汗を拭く西村さんを見ながら厨房で働く父の姿をふと思い出した。