なみだ雨





走るに走った。


少しでも立ち止まったら、捕まりそうで。


気を抜けば崩れ落ちそうな足を動かした。



大通りに出た。


赤信号を待つ。


誰もはるかを見ようとしなかった。

見て見ぬふり。



ただ1人を除いては。



バタン、と車のドアがしまる音が

耳に入った。


それからすぐに、
はるかの周りの雨の音が変わった。


ザーーーーーー

という音から

ボタボタボタボタ


はるかはふと顔を上げた。


さっきまで一緒に赤信号を待っていた人たちはすでにいなかった。


真横に立っている人を見上げた。

瞬きをして、涙を流す。


「大丈夫ですか?」


傘をさしてくれている。


いつの間にかしゃがみこんでいたのだと気づいた。


やっと視界がはっきりしてきた。



「あ…大福の人…」



ここではるかの意識は途絶えた。


ふわふわと身体が浮いたような感覚が

最後の記憶だった。






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