なみだ雨
練が靴を履く流れをはるかは何も言わず
無言で見届けた。
「前使ってた炊飯機があるんです。良かったら、使いませんか?」
それじゃあまた
また来てもいいですか?
そんな言葉をかけられるのかと思っていた
想像と違う言葉にはるかは、え?っと
聞き返した。
「あ…嫌ですよね」
「嫌じゃないです、嬉しいです」
そう言って微笑むはるかを、
愛おしく思えた。
「じゃあ今度持ってきます」
ドアノブをひねると同時に、
「携帯持ってないんです」
と後ろから聞こえて振り向いた。
「携帯壊されてしまって…」
あぁ、だから返信がこなかったのか。
「大学辞めて、今は和菓子屋さんでほとんど毎日働いてて、夜9時にはここにいます」
「また、いいんですか?来ても」
はるかはこくりと頷いた。
「梁島さんのこと、怖くないです」
今日はありがとうございました、
はるかはそう言って微笑んだ。