なみだ雨





「おう、べっぴんちゃんだよ、練に客」

「え、俺に?」


事務所に入ると拓也に声をかけられる。

拓也の指す方を見ると、

何回か見たことあるバックが目に付き、

成海だとわかる。



「彼女?ねえ、彼女?ねえねえ彼女?」


しつこく聞いてくる拓也を無視して

成海の方に歩いていく。



「あ、練」


成海も練のそばにくる。

「お疲れ様」

成海はそう言うと紙袋を差し出す。

中を見るとあのお店の大福。


「今日ね、練の親戚の子に会ってきた」


にやにやしてる拓也の視線を感じると、

成海の背中を押して会議室に入る。



「なにしに来たの」


開口一番、自分でもびっくりするぐらい

低い声でぼそりと呟くように吐き捨てる。


「なにって、一緒に帰ろうと…」

「まだ終われないから」

「え、もう帰ってる人いたのに」

いつからいたんだよ、と頭を抱える。


「ごめん、この際だから言うけど」

練はもらった大福をそっと机に置いた。

「俺らもう付き合ってないだろ。妊娠だって…」

「してるよ、妊娠」


成海はそう言うと、いきなり

来ていたワンピースを捲り上げた。

「ちょ…」

練がおもわず目をそらす。

「見てよ、わたしの見てよ」

背中を向けたまま、

練はこっちを見ようとしない。


「見てよ練!」

練の手をとり、自分のお腹に当てる。


見なくてもわかる。

微かに、だけど確実に、

ぽっこりとしていた。



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