なみだ雨





「あぁあー、忘れてた、これ!」

理子の声が奥から聞こえて、

はるかはガラスから奥を伺う。


理子の手には白い便箋。

ショーケースの前で何を買うか決めているお客さんに、

すいませんと一言声をかけて

奥へと引っ込んだ。


「どうかしたんですか?」

「どうしようこれ、出しに行かなくちゃ」


いつにもなく慌てている理子。

こういう時に限って、

お客さんから、

すみませーんの声。


「わたし行ってきます。郵便局で大丈夫ですか?速達?」


はるかはそう言って持っていたトングを

理子に渡す。


「え?で、でも…」

「大丈夫。任せてください」


それだけいうと、理子の背中を押した。

申し訳なさそうにお店に出ていった

理子を見届けると、

はるかは上着を着てお店を後にした。


テーブルに携帯を忘れたのを、

気づくことはなく。




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