その瞳をこっちに向けて
「あー、知ってる。知ってる。タスクさんだっけ?」
記憶の中の王子様情報がカチンと弾き出されて答えたのだが、鈴菜の目尻が再びつり上がる。
「なーに、名前で呼んじゃってんのよ!この子は!中畑先輩のファンが聞いたらリンチもんよ!」
「マジっすか!?」
「半分位マジよ」
「それ、微妙」
苦笑する私に再びため息を吐く鈴菜。そして、今度は少し真剣な目を私に向ける。
「半分位はマジ話なんだから、気をつけた方が賢明よ」
「えー。でもさ、仁先輩がそう呼んでたなって位しか記憶にないんだもん」
「それでも!」
火のない所に煙はたたない。
何かがあったからそんな噂が広がる。
そういう事なのだろう。
確かに注意しておく事にこしたことはない。だって私は別にその先輩を名前で呼びたいなんて思ってないんだから。