イジワルな初恋
玄関に降りた私は、片方の靴のかかとを踏んだまま急いで家を出た。



『大丈夫?寝ぐせついてるよ』

朝からずっと連絡を待っていたから髪をとかすのも忘れてたけど、そんなのどうだっていい!


『どう、だったの……?』


少しの沈黙の後、中矢君が答えた。


『うん……合格してたよ』


その瞬間、全身の力が抜けた私はその場にしゃがみこんだ。


なんだ……なんだよ……。

連絡がこないから、すごく不安で心配で……。


『りりー?』

しゃがんでいる私の体を支え、ゆっくり立たせた中矢君。

良かった……本当に良かった。


『これで……中矢君の夢に、一歩近づいたね……。おめでとう』


そう言って視線を合わせた瞬間、中矢君は私を抱きしめた。


『だからさ……りりーが泣いたら、俺まで泣けてくるだろ』


今中矢君が泣いているのか顔を確認することはできないけど、温かい体に包まれた私の目からは……涙が溢れて止まらなかった。


私たちは違う高校に行くけど、これからも私は中矢君の夢を応援していきたい。

これからもずっと……私たちは友達でいられる。


そう、思っていた……。


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