さよならは言わない
それでも、顔をあげるつもりはない。
すると今度は低く冷たい言葉が私を襲った。
「森田との個人的な付き合いは遠慮してもらおうか。森田だけじゃない。我が社の優秀な人材を君の餌食にするつもりはない」
やはり尊はまだ私をお金目当ての女だと思っている。
私をそんな女にしたいのならなってやるわよ。
私は顔を上げて尊の顔を睨み付けた。尊はカボチャと思えば良いのだから。
「この会社は専務の許可がなければ恋愛も出来ないさもしい会社なのかしら?」
「君だけは特別だ」
「特別扱いは必要ないわ。私は他の女性社員と同じよ。だけど、私は以前付き合っていた男にそれは酷い仕打ちを受けたから、そんな男のいる会社の社員は願い下げだわ」
もう関わりたくないから放っておいて。
私はこの人を一日も早く忘れたい。忘れなきゃいけないのに。
どうして放っておいてくれないの?
「今度色目を使った時は即刻契約破棄する」
「なら社員教育を徹底して欲しいわ。正社員に逆らえない私はここの社員に従う必要があるの」
「俺に従えばいい!」
尊がこれ程までに傲慢な男だとは知らなかった。
もしかしたら、私は別れて良かったのかも知れない。
「分かりました。専務の仰せのままに。私の貴重な休み時間に戻っても宜しいでしょうか?」
「..........悪かった」
そんな言葉は聞きたくない。
私はまた机に突っ伏して仮眠を取るふりをした。