さよならは言わない
医務室のベッドに疲れきったような顔をして私は眠っていた。そんな私のそばについてくれていた尊は、身動き一つせずに椅子に座ったまま私の眠る顔を見ていた。


「専務、彼女は医療機関で検査を受けた方がよろしいかと」

「気になることでもあるのか?」


医務室の責任者でもある看護師に尋ねると、看護師は社員名簿を見ながら症状を記録として書類に書き込んでいた。


「彼女は派遣社員ですね。会社からの援助は受けられないので自己負担となりますが検査は必要です」


尊が抱き抱えた時も感じたが以前に比べとても軽かったのだ。

以前は健康的で明るかったのに尊と別れた後に体調を崩し元に戻らないのだ。

原因の一つは大事な人との別れにあった。けれど、この事実を知るのは親友の友美だけだった。


その頃、昼休み時間は終わり午後からの勤務が始まるとフロアに戻った友美や森田さんは私の姿が無いことに心配していた。


「森田さん、あの、笹岡絵里は一緒ではなかったんですか?」

「それが、事情があって彼女とは途中で別れたんだよ」


すると、二人の話を聞いた隣のデスクの女子社員が休み時間に起きた噂話を話し出した。

それは、体調の悪い私を尊が抱き抱えて医務室まで運んだというものだ。


「なんですって?! 冗談じゃないわ! 最近やっと戻りかけていたのに! 医務室へ行ってきます」

「あ、俺も」


友美と森田さんは急いで医務室へとやって来た。

目を覚まさない私を心配した尊はまだベッドの横で私の様子を見ていた。

そこへ血相を変えた友美がやって来た。それに続くように心配した森田さんも医務室へとやって来た。

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