ご褒美は唇にちょうだい
4.誰のものでもないあなた



「真木くん、コーヒー飲むでしょう?」


自分のデスクで仕事に没頭すること数時間、顔をあげると、横に信川がいた。

ぽってりした厚い唇とさらさらのロングヘアは、信川を若く見せはしないけれど、年相応のいい女に見せている。

俺はというと、片付けなければならない仕事が山積みだ。
朝ドラと鉄道会社のタイアップに関して、新たな広告を打たなければならない。仕事は単純に倍増している。

あと20分ほどで操が撮影現場から到着し、その10分後には社長を交えて大手代理店の担当と打ち合わせだ。
操のスケジュールは金曜ドラマがクランクアップしたので、朝ドラを整えればあとは調整しやすい。今日も撮影を中抜けして、打ち合わせに参加できる。

つまり、現在の俺は結構急いでいて、コーヒーを飲むゆとりはない。
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