ご褒美は唇にちょうだい
「うちのアクターなんだから、関係大アリじゃない。あなたの可愛い操ちゃんのお仕事の参考にもなるんじゃないの?」


可愛い操ちゃん、ねえ。信川の揶揄はたまに嫌なところをついてくる。


「間に合ってる。とにかく、忙しいから仕事をさせてくれないか」


「いや」


信川が唇を尖らせる。
三十超えてやめろ、その仕草は。そればっかりは可愛らしく見えない。


「じゃ、はっきり誘うわ。セックスしましょ」


俺にしか聞こえないボリュームではあった。
しかし、職場ではまず聞かないワードに俺は眉をひそめた。


「無理」


「なんで?昔、一度あったじゃない」


信川はニヤニヤと微笑む。
確かに信川とは一度寝た。レグルスに入社してすぐの頃だ。
当時、信川は独身だったし、俺と同い年で気安かった。
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