ご褒美は唇にちょうだい
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「久さん……」
声がして目が覚めた。
どうやら、俺は操の手を握りながら、横の座椅子で寝落ちていたようだ。
操が枕に左の頬をくっつけたままぼんやりと俺を見ている。
半覚醒状態だ。
「大丈夫です。そばにいますよ」
「風邪……ひく」
「ひきません、もう随分あたたかい時分です」
背を座面から浮かせ、あやすように手を何度か握る。
きゅっきゅっというリズムに安心したのか、操はまた目を閉じた。
子どもみたいだ。
俺は帰宅するのを諦め、座椅子に背を預け直した。
操の手を握り、自分も再び眠りにつくまで何度か握る力を変えた。