ご褒美は唇にちょうだい
なんだそれは。今日日の若手役者は大きな仕事でも手を抜くというのか。


「問題がありますね。現場の士気が下がるなら、手は講じますが」


俺がまた何かすると思ったのか、操は慌てて続きを言う。


「違う、違う。やる気がないとか、そういうんじゃなくて、まだ隠し玉があるぞーって感じよ。ほら、ヒーロー俳優としては、かなり早い時期からブレイクしたでしょう?よっぽど引き付けられる魅力があるのかなって」


操は立ち上がると洗面台でマウスウォッシュを始めた。
その姿を視界に入れながら、考える。

力のある役者は助かる。操に負けない演技をしてもらわなければ、ドラマ全体が崩れるからだ。操は同年代の役者の中では能力が飛びぬけている。


「相手はまだ新人の部類です。引きずられないようにしてください」


操はうがいを終え、顔だけこちらえを向けた。


「誰に言ってるの?」


その顔は怒っているわけではないけれど、マネージャーの不調法にムッとしている様子。
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