ご褒美は唇にちょうだい
「鳥飼さん入られまーす」


操が空気を切るようにスタジオに入っていく。
キャストも周囲もすわっと彼女に道を開ける。

これがヒエラルキーのトップたるものの姿だ。
主演は鳥飼操。

俺はその背を見つめ、少しの誇らしさを覚え、後に続く。


「ランスルーから入ります」


ADに言われ、頷く操に駆け寄る人影。
反射的に駆け出しそうになったけれど、すぐにそれが共演者だと気付く。

歩調を緩め近づくと、小鍛冶奏が操を見下ろす格好で話しかけていた。


「鳥飼さん、おはようございます。今日は見学させてもらいます」


「小鍛冶くん、おはようございます」


操は本番前の集中で笑わない。
もともと、演技以外では愛想がいいとは言えないほうだ。
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