ご褒美は唇にちょうだい
「今度、鳥飼さんを食事にお誘いしてもいいでしょうか?」


俺は操から目を離し、ようやく小鍛冶を正面から見据えた。

小鍛冶青年は笑顔だった。
若者にありがちな無意味な自信に満ち溢れた輝かしい笑顔。


「大人ですから、そういったことは本人に任せています」


答えた声は苛立って聞こえないだろう。
感情を殺すことにかけては、そこそこ俺も役者だ。


「ドラマの撮影は始まったばかりです。妙なスキャンダルにならないように、よく事務所の方と相談してお決めになるといいですよ」


「そうですか!そう言われる気はしてました」


にこっと笑った小鍛冶青年は、俺に一礼する。


「ありがとうございました。今後もご指導よろしくお願いします」


きみの指導をするのは、俺じゃない。きみの事務所だ。

腹の中で答え、俺は会釈した。


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