ご褒美は唇にちょうだい
そして、本人もそんな自分に戸惑っている様子だった。
これは話を聞いてみた方がいいかもしれない。

折しも関東近県の海辺に来ていて、近くのホテルに連泊という状況だった。ロケの最終日は明日。


「操さん、ちょっといいですか?」


ホテルの彼女の部屋を訪ねたのは、今日の撮影が終わり部屋に引っ込んだ後。

操の部屋に入ると、彼女はシャワーを浴び、ノーメイクという状態だった。
Tシャツにショートパンツ。夕食前だが、外に何か食べに行く気はなさそうだ。


「夕飯の話?いらないからいい」


「いえ」


じゃあ、何よ。操の目が俺に言っている。何の文句を言いに来たのよ、と。


「操さん、調子悪いんじゃないかと。体調がすぐれませんか?」


「残念ながら、体調は絶好調」


ハリネズミみたいだ。トゲトゲしい答えは、『気持ちの問題』と言っている。
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