ご褒美は唇にちょうだい
「あまり表には出しませんが、俺は操さんのファンですからね。あなたの演技は誰より見ているし、誰より興味がある」


「……あっそう」


「だから、あなたが不調ならわかるし、理由が知りたいと思います。何かありましたか?」


操が黙った。ベッドに腰かけた姿勢で、うつむいて。
長い間だった。でも俺も辛抱強く待つ。


「……す」


だいぶ経ってから操が口を開いた。
何と言ったのか聞き取れず、かがみ込もうとすると、操がばっと顔を上げた。


「キスシーンがあるのよ」


「……え?……ああ、ありますね、明日」


操の必死の形相を見下ろしながら、意味が分からず頷く。
しかし、すぐに理解した。


「あれ?操さん、キスシーンは初めてでしたっけ?」


「初めてよ。……前のドラマの時は、見えない角度だったから、するフリでよかったの。今回はしっかり、ディープキスをしなきゃいけない」


そう言うと、操はまたしてもうつむいた。長い髪の隙間から見えた耳に赤味がさしている。
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